2月19日から23日で北海道横断ラリーが開催された。
ご承知の通り爆弾低気圧の真っただ中だ。
ロジスティクス業務で同行していたが、半世紀以上の北海道人生の中で初めて経験する大荒れの超極悪台風だった。間断のない降雪と積雪を舞い上げる強風にボンネットの先端が見えないホワイトアウト。当然吹き溜まりは風で固く締まり、ランクルの重量と大径タイヤをもってしてもまるで波に翻弄される船の様なピッチングの連続だった。
天気図も生まれて初めて見る北海道にかかる等圧線がなんと7本。風速は平均で37ktだった。
私見だが北海道での等圧線の理解は、「3本で自宅から出るな!」「5本で爆弾低気圧、災害級の大荒れ。」それ以上はこれまで経験がないので比喩しづらいが、多分「核弾頭級低気圧。」が適切かと思う。
ピークは摩周湖周辺だった。その日のビバークは川湯。何とかたどり着いたものの道東一帯は1本の道を除いてすべて通行止めとなった。エントラントが無事到着出来たのは幸いだった。
翌日のラリールートは閉鎖。コマ図も用無しとなった・・。急遽代替地のビバークを確保し緊急避難。なかなかにシビレル展開となった。(エントラントには思い出深いラリーとなったと思う。)
俺も当初は帯広、弟子屈、根室、斜里~の「道東の猟場の下見だなあ~。」と能天気なことを目論んでいたがいきなりの緊急事態となって結構緊張感があった。
道すがら強風ホワイトアウトの中、路外に突っ込んだ一般車3台の車両をレスキューした。
作業で教訓を得た。「ジジイには気を付けよう!」
雪山に突っ込んだ一人のジジイは何にもできないでいた。運転席に座りハンドルを握ったまま宙を見つめるだけだった。スコップもスノーヘルパーも牽引ロープもなく。牽引フックについてもその存在自体知らなかった。車はホンダのFIT。楽勝で引き上げ、と思ったがランクルがスタックしそうになった。「なぜこんなに重い??」でFITを覗くとATシフトがPレンジだった。(心の中で、「さっさと免許証返納せい!」と叫んでいた。さほど遠くない未来の自分への言葉でもある・・な、と吹雪の中で悟った。・・行く道か。考えさせられた。)
スノーシューはMSRのデナリを使っている。
購入してから二けたの年数を優に超えている。
先日、今季初登板の出番があったが使用不能だった・・・。ビンディングのラバーバンドが経年劣化でちぎれた。両足計8本のバンドがすべて千切れるか亀裂が入り全く役に立たなかった。(千切れるというよりは素材が硬化して砕けるといった感触。)
昨期は大丈夫だったので、専用ケースにしまいっぱなしで今季確認もせず現場に持ち込んで上記のような羽目になった。
致命的な大失敗の出来事だった・・・。「装備の確認不十分で現場で窮する。」
もしこれが仕事の部下だったり息子だったら多分かなりな叱責をするところだ。
それがいい歳をした自分がこんな大不覚、大失敗をした。心から恥じ入っている・・・。
ゾンメルスキーを常に併用しているので即コンバートして不自由は無かったが、冬山装備の確認不十分は全く言い訳が立たない。大バカ者でありただの愚か者だ!
北海道で生まれ育って冬山に入るのに・・・あー恥ずかし~!自分の人生史から消し去りたい。
これまでの数多くの失敗に加えまた黒歴史がひとつ増えた。
歳を重ねるごとになにか愚かさが積み重なっていくようだ・・・。
「馬齢を重ねる」の意がわかった・・・。
(ゾンメルスキーのビンディングは革で、ミンクオイルを塗布するだけで30年。ほとんど劣化がない。やっぱ昔ながらの天然素材か~。これもまた考えさせられた。スノーシューも革のビンディングにせばいいのにね~。・・これは言い逃れではない。前向きな提案である!エヘン。)
先週は全道レベルの超ドカ雪で猟どころか煙草すら買いに行くのがはばかられた。
それで今週、猟場がどんな感じになってるか見に行ってきた。(とは言いつつ鉄砲持参だ。)
もちろん少しでも積雪が少なそうな太平洋方面だ。当該地は3年振り位か・・。
案の定、札幌近郊の半分くらいの積雪状況だった。それでも結構な量だ。
ありがたいことに朝から出会いがあった。当歳仔の小鹿だ。回収も昼前には済んだので午後の部で近郊に場所を変えて探ってみた。これもありがたいことに午後一でメス(写真)のいいのを授かった。ふと前日の北京五輪のカーリング日本×デンマークが頭をよぎった。最終エンドで3点獲得の勝利。
「日没までまだ時間がある、イケるかビッグエンド!」
・・・ま、結局、ウンなことはなかった。
ちょっと気づいたことがあった、鹿がかたまり始めている。例年なら3月に入ってからの事と思っていたが、、、、付場も例年に比べ幾分下がってきているか? そして仔鹿は仔鹿だけで群れ、雌は雌でのかたまりだった。早くネ!?
餌場も苦労が見受けられた。緩斜面は雪が深いのでかなり急峻な斜面での採餌だ。タランボの樹皮まで喰ってる。(ご存じの通りタランボはトゲトゲの樹皮だ。)
ドカ雪は街場だけでなく鹿の世界でも災害だな。仔鹿は瘦せていた‥春を迎えられる個体は僅少だろう。
とんでもなく降った。札幌に住んで40年。俺にとっても人生で一番降って積もった大雪だった。
この日たまたま息子が家に顔を出した。貸していた車を返しに来たのだが、駐車場の除雪が大仕事だった。
帰る際に送っていった。4㎞位の距離だが3車線あるはずの通りが1車線になっていて且つザックザク、ボッサボサ、ボッコボコの・・路面?雪原?北京五輪のモーグル?そんな感じだった。
送った帰り・・・たった4㎞の間で結構な作業があった。
1,タクシーの救助。
2,雪山の陰で動けなくなったお年寄りの救助。
3,4tトラックの救助。
タクシーは簡単だったが、お年寄りは雪山の陰で完全に動けなかったのでおんぶして車に乗せて自宅まで送った。俺の車はタイヤが大きく車高が4インチ上がっているので除雪が入っていない小路もどんどん入っていけたし、おんぶして乗せる・下ろすも屈まずに楽だった。
4tトラックは想定外だったが、これも大径タイヤのおかげで難なく引き出すことができた。
冬の廃道猟場仕様のランクル60は日頃街中では無用の長物だが、この日に限っては街場で大活躍だった。頼もしかったのは全備3tの車重に315x75x16サイズのタイヤとトレッドだ。ジオランダー072は大雪に効く。トレッドの深さとシーランド比が絶妙だ。大変な一日だったが人助けもできたし勉強にもなった。
「保存」「食味向上」「栄養価UP」で抜群のポテンシャルを発揮する日本の魔法の食材だ。
鹿シンタマのいいサイズを切り分けてそれぞれで漬けることとした。
鹿猟従事のご同輩には衆知の料理法かと思うが、改めて「日本の伝統食・健康食」に敬意を表し以下に紹介させていただきたい。
粕味噌
・酒粕と味噌を1:1として酒と味醂を加えて少し緩めの漬け床を作る。
塩麴
・麹に塩とぬるま湯を入れて常温で一週間。(炊飯器で作ると一日。簡単だ。)
粕味噌はサランラップに半量を塗り、鹿肉の切り身を並べる。残った半量を上に塗り空気を抜きながらラップでくるむ。
塩麴はジプロックでもタッパ―でもいい。
冷蔵庫で二晩。あとは焼くだけだ。もちろんミディアムの焼き加減が肝要だ。
粕味噌焼きも塩麴焼きも柔らかく、風味、滋味ともに佳味であること間違いない。保証する!
失敗しようがない料理と云えるだろう。ただ一点、焼き加減は注意しよう。ミディアムレアを狙って出来上がりはミディアム。そんな感じだ。(写真は粕味噌焼きだ。ちょっと焼き過ぎたか。)
ミートハンター。「獲る苦労、料理を考えるゲーム性、誰かと食する楽しみ、そして健康。」シンプルでいい生き方と思う。
年1回、従事者全員に義務付けられている講習だ。発注者との関係や業務計画、安全管理に捕獲態様、分厚い資料集の解説とビデオで時間一杯の講習だ。
区民センターの会議室も朝一から最終閉館ギリギリまで通しで借りっぱなしだ。
受講者も大変だったかと思うが、それ以上に何より事務局と講師が準備に、当日にと大変だったかと思う。心より敬意と感謝を申し上げたい。
「お疲れさまでした!」「そして、ありがとうございました!」
「鉄砲を持つ。」昨今はいろんな手続きや手順が増加する一方だ・・・
「毎年の装弾、実包の管理簿導入。」「散弾、ライフルの更新時技能検定導入。」捕獲従事者には「上級救命資格取得」に、夜間対応者には更に厳しい「技能検定」・・・
米国の全米ライフル協会が日本の取り組みを知ったら多分かなりびっくりするだろうな。
ま、これ以上の規制や運用細則が出来ないようにするためには「安全狩猟」これに尽きる。
「無事故・無違反の徹底。」呪文や念仏ではないことを改めて肝に銘じたい。
100mを外した・・・。
ゼロインを100mで採った4,5倍でのスコープでだ。
牡鹿がケツを向けて立ってた。真っ白いケツと後頭部が見えた。
ミートハンターとしてはケツに撃ち込むことは是非避けようと後頭部に照準を合わせた。
何の迷いもなく自信たっぷりにトリガーを落とした。
派手に毛が舞い上がるのが見えた。
「ヤリー。楽勝!いただきー。」で獲物が倒れているであろうポイントに歩を進めた。
・・・「いない??」「なんで??」足元には飛び散り広がった無数の「毛」・・・?
血も引いていない。飛んだ足跡だけが残っていた・・・。
久々にドン底まで落ち込んだ。膝をつきそうになったがかろうじて耐えた。
「鉄砲辞めようかなあ~。」「向いていないんだ。」「才能がないんだ。」「ド下手。」「100mだぜ~。」
あらゆるネガティブな言葉が頭を駆け巡った。挙句の果てには「銃身曲がってんじゃね。」「いやスコープがズレれてるかも。」と道具のせいにし始めたりしていた。
今も引きずっている。立ち直れないでいる。トラウマだ。たぶん一生忘れない一発と思う。
誰かに慰めてもらうしかないが、こんな時にかぎって聖地ススキノは開店休業状態だ・・・。
膝を抱えて暗い部屋で中島みゆきでも聴くしかない。「ファイト」がいいかな。
・・誰かどこかで頭に剃り込みが入った鹿を獲ることがあったらぜひ知らせてほしい・・。少しは立ち直れるかもしれない・・。
長かった~。…車検。
旧い車で過走行と考えれば致し方ないが、この時期の長期車検は猟に影響する・・。
昭和63年車、走行距離36万㎞、マニュアルで1ナンバーの毎年車検。そして1年の間ほかにもなんだかんだで1ヶ月は整備工場に入っている。
エンジン本体以外はほとんど手が入っているので、パーツ交換から考えると新車になりつつある。
車検期限も初めは5月だったのが永年使用でいつのまにか12月まで伸びていた。
今期11月のひと月は休猟せざるを得なかった。
でも良いこともある。代車がアルファードだった。V6の3000㏄ガソリン車でAT。ステアリングにいろんなボタンがついていてよくわからなかったけど、楽~! 快適、超便利。極楽の乗り心地だった。山には入れないが今時の車の進化には刮目させられた。
XVに乗る息子に「スゴイ車だぞ。これに乗り換えろ。」と云ったら、あっさり「フツー。常識。当たり前。」と返された。
車検を通じて平成生まれとの世代間ギャップに気づかされた。令和世代とは意思疎通ができないかもしれない。(…昭和が遠ざかる・・・。寂しい~)
あ、それと今の車って灰皿ないんだね!? 昭和の車には3つも4つもついてるのに~。時代か。
鹿革は財布にキーホルダー、ティッシュケースにスマホケースetc,,。
値段に驚きだ。
財布2万円。ティッシュケース3千円。スマホケースは6千円だ。
鹿の利活用と新たな価値の創造には頭が下がるが、やっぱお値段の市場性は冷静に要検討と思う。それと縫製だな・・。 いっそのこと一桁上げて中国マーケット向けにすればイケるかも。
鹿油はリップクリームで2千円強。これも相当なもんだ。
ハンドクリームもラインナップされていて2千円弱の値付けだった。
道産天然エゾシカ製品なので、ある意味自分も生産者の視点で俯瞰するに捕獲・搬出・原皮初期処理等々を考えると大量生産とはならないこともわかる。当然すべてにおいてコスト高。販売価格もそれなりに、となる。
製品を見る目は生産者。値札を見る目は消費者。なかなか間が取れずに写真だけ取ってみた土産品コーナーだった。
今期の「牡」を加工に出していた。時期でもあり肉で食うよりソーセージがいいかなとの考えからだ。チャーリーハウスで枝肉をクラコウソーセージに、ロースはスモークハムにだ。
昨日出来上がりの電話が来た。肉を持ち込んでから3週間だ、早い。ソーセージは段ボールにびっちり二箱分。ハムは12ブロックに分けた真空パックだ。
早速いただいた。特にロースのスモークハム仕立ては初注文だったので一番気になっていた。
・・・もう~!これが「サイコー、傑作、感動、ミシュラン5つ星」だ。
ワサビと柚子胡椒で試したが箸が止まらない美味さだった。俺はウイスキーのオンザロック。カミさんは純米大吟醸の冷や。日曜の昼間から出来上がってしまった。
「スモークハム」は大正解!そしてさすがわかっているチャーリーハウス。牡のでっかいロース肉なのでそれを食べきりサイズに分割しての加工と真空パックだ。
枝肉のクラコウソーセージはいつもどおりの安定の出来上がりだ。間違いない!こちらは鉄のフライパンにオリーブオイルを引き超弱火でハジけない様に全面焼き目で熱々とする。缶ビール片手の焼き物作業は実に楽しい。ガスコンロの前でナイフとフォークで立ち飲みだ。
・・・今冬の酒の肴、おかげさまで11月で準備完了だ。
ただ、突然貧乏になってしまった。請求書は卓越した技術に見合った加工料金と持ち込んだkgの総額だ。 師走を前に懐はすでに氷点下。歳越せるかなあ~。